麻酔の安全性について
2009年9月11日
各種外科手術や一部の処置において麻酔は不可欠なものとなります。
麻酔をかけること自体は簡単な処置なのですが、それ以上に肝心なことは対象動物の状態を把握する努力となります。動物は話せないので、問診は飼い主さんからの情報のみとなります。その為、麻酔事故の危険性は人間以上とされています。ちなみに人間では10万人に1人の確立とされています。それゆえに術前検査による状態の把握と術中のモニタリングによる状況の把握は重要なものであり、ペット、飼い主さん、術者にとって安心をあたえてくれる材料となります。但し、医療機器と共に人間の五感も大切な武器であり、視診、触診、聴診は基本的な判断手段となることは言うまでもありません。直接に問診の出来ない動物の良き理解者となり、安心感を与えられるよう細心の注意をもって取り組むことが大切といえます。
当院では安全に手術や処置が行えるように、麻酔中には以下の項目を連続的にもモニタリングすることを実施しています。
- 1)心電図:心拍数や不整脈の有無をチェック
- 2)終末呼気炭酸ガス濃度:吐き出す息の中の二酸化炭素の濃度の測定
- 3)呼吸数:呼吸が正常に行われているかの確認
- 4)麻酔ガス濃度:麻酔深度の管理や覚醒時期の推定
- 5)動脈血酸素飽和度:酸素不足の早期発見
- 6)血圧:心臓のポンプ機能が正しく働いているかの確認
- 7)体温:術中の体温の上昇や低下をいち早く発見
また、もしも術中に呼吸が弱くなる場合には、人工呼吸器により呼吸補助を行うことにより、麻酔の安全性を高める手段も実施しています。
「我が家のペットに麻酔は大丈夫でしょうか?」よくある質問なので今回は麻酔についての簡単なお話とさせていただきました。
写真は、手術室の一部です。
左上が、バイタルサインモニタで、その隣が麻酔器及び人工呼吸器です。