ペットの高齢化と腫瘍年齢について
2008年6月20日
近年の動物医療の発展により長寿の犬・猫が増えつつあります。そんな状況下で様々な腫瘍の発生率も増加しつつあります。一昔前では高齢期を迎える前に寿命を終える犬・猫が多かったのですが、長寿化が進むということは腫瘍年齢を迎える動物も増えてきているということになります。特に近年犬では死亡原因の第一位は腫瘍・癌といわれるまでにあります。日常の診療においても実に様々な腫瘍に遭遇します。
動物の腫瘍にも良性・悪性はもとより、肉眼的に確認できるものとそうでないもの、体表のものと体内のもの、実に様々なものがあります。中には肥満細胞腫のように、腫瘍の詐欺師とまで呼ばれ肉眼的には良性に見えても、実は悪性度の強いものもあります。 体表の腫瘍の場合は日常生活の中で、飼い主さんとのスキンシップにより発見されることが殆どです。早期発見の為にも、普段から体全体を触知するよう心掛けると良いでしょう。 体内の腫瘍の場合は、様々な全身症状を伴っており、レントゲンや超音波検査により発見される場合が殆どです。
また最近では、動物の分野でも腫瘍マーカーにより悪性腫瘍を血液検査により検知することも可能になりました。いわゆるガン検診とよばれるものです。但し、検知率は80パーセント程で、臨床所見や他の検査との総合的な判断が必要とされます。興味のある方は来院時にお気軽にご相談下さい。
【写真1】 |
【写真2】 |
写真1は11歳のゴールデンレトリバーの膝部分にできた腫瘍です。切除後の病理組織検査の結果は血管周皮腫でした。再発率約20パーセント、転移率5パーセントの腫瘍です。
写真2は17歳のミックス犬の前肢指端にできた腫瘍です。切除後の病理組織検査の結果は 良性のものでした。
さて、梅雨入りしたかと思えば、晴れた日には気温が上がり、夏の到来が近いことを感じさせる時期となりました。今病院には猫同士の喧嘩により高所より落下してしまい骨盤骨折をした11歳の猫が入院しています(写真3)。猫の高所落下症候群とよばれるものです。元来、猫は器用に着地しそうなイメージがありますが、2階(3.6メートル)以上の高さより落下した場合、様々な損傷をこうむる可能性が高いというデータがあります。来院時には起立不能で激しい痛みを伴っていましたが、手術後の経過は順調で術後5日目には起立歩行が出来るまで回復しました。あとはケージの中で数週間辛抱してもらえれば、元の生活に戻れることでしょう。
高齢化社会と様々な病気や事故、それに伴う動物医療保険の浸透。動物の世界も我々人間社会と同じであると日々実感している今日この頃です。