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コラム

雄犬の生殖器疾患について

2008年3月7日

早春となり、日増しに春めいてきました。今年も子供とりぼんを連れて、金目川の桜を見ながら散歩するのが待ち遠しい今日この頃です。

そが動物病院:雄犬の生殖器疾患 レントゲン写真

病院ではこの冬、雄犬の前立腺に関する病気が多くみられたので、今回はこのお話です。
雌犬では将来的な卵巣・子宮疾患や乳腺腫瘍の発症予防の為、避妊手術が推奨されることは、多くの飼い主さんがご存知のことです。それに比べ、雄犬での生殖器系疾患はあまり認知されていないような気がします。中でも特に多いのが前立腺肥大です。
人間では非常にポピュラーなものですが、実は犬でも多くみられます。

6~7歳以上の未去勢犬では高確率に前立腺の肥大が認められます。もしも未去勢の愛犬に血尿、排尿障害、排便障害、時には後肢のふらつきなどの症状があればこの病気の可能性があります。前立腺肥大とは前立腺組織の過形成のことですが、他にも前立腺嚢胞(肥大が進行し、前立腺組織内に体液や血液が溜まるもの)、前立腺膿瘍(先の嚢胞が更に悪化し感染を起こし膿が溜まるもの)、更には前立腺腫瘍などもあります。

そが動物病院:雄犬の生殖器疾患 レントゲン写真

前立腺疾患の発症は精巣ホルモンと関連しており、その発症予防には早期(5歳前後までに)の去勢手術が推奨されます。また、これらの疾患は無症状の段階でも触診やレントゲン検査、超音波検査などで判別可能な為、健康診断がてらにチェックしてみるのも良いと思います。

実際の症例ですが、写真は前立腺嚢胞の16才の犬のものです。 1週間前より排尿障害(血尿リン滴)がみられ、昨日より尿が全く出せないという主訴で来院されました。既に意識混濁し、腎不全・尿毒症も併発しています。すぐに尿道カテーテルにより溜まった尿を抜き、点滴処置により水和をとります。幸いに全身状態はすぐに落ち着き、しばらくは留置したカテーテルを通しての排尿となります。検査の結果、よくある尿道結石や膀胱炎の所見は全く見られず、膀胱麻痺でもないようです。

そが動物病院:雄犬の生殖器疾患 超音波検査

超音波検査では肥大した前立腺内に幾つかの嚢胞が認められ、更に尿路造影を行い、レントゲンにて確認したところ、極端な尿道への圧迫が認められました。超音波画像を頼りに嚢胞部分の液体を抜いてみると体重5kgの犬に対して、薄い血様物が計10ml以上も抜けました。尿道カテーテルを抜いた後は5日程のリハビリを重ね自力排尿が可能となり、今は元気に過ごしています。肥大した前立腺の方は、16才という高齢を考慮した飼い主さんの要望もあり、内科療法(精巣ホルモンの働きを抑制するホルモン剤)により、コントロールしています。但しホルモン剤の効果は100%とはいかず、定期的な投与を中断すれば再発もある為、今後も注意が必要となります。根本的には去勢手術によって治癒することが殆どとなります。但し腫瘍の場合、その発生は稀ですが、去勢の有無とは関係なく発症し、一般的に悪性度が高いうえ転移も多く、予後不良のものとなります。

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